最近の話題について思うこと

 2015年9月19日に国会で成立したいわゆる「安全保障関連法制」について、私なりの意見表明をしています。中身についてはいろいろ賛否もあるでしょう。ただ一つだけ強調しておきたいのは、「研究者はいかなる場合でも政治や社会のことについて発言を控えるべきだ」といった考えには賛同できないということです。自分個人の信念を何でもかんでも大学人の立場で自由に発言しようとは思いません。ただ自分の研究と教育が社会や政治のあり方と無関係に成り立っているわけではない以上、私の専門領域の存在意義に関わる問題については、発言する責務があると考えています。
 研究は「中立的」であるべきで、その「中立性」とは無色透明で無菌培養のようなものだと思っておられる方には、少し考えていただきたいと思います。何が「中立的」であるかは誰が判断するのでしょうか。特定の個人ですか? どこかの党派ですか? それとも国家ですか? 「中立的」であることの絶対的な判定者は存在するのでしょうか。国家なら間違いを犯さないのでしょうか? 私の意見が偏っていることは認めます。でも世の中に偏っていない意見、党派的でない意見というのはそもそも存在するのでしょうか。私は存在しないと思います。
 教育については少し注意が必要です。教師は自分の見解を曲げずにそのまま学生に伝えるべきです。但しその意見があくまでも党派的なものであることを同時に学生に伝えねばなりません。 教師の意見も「絶対的なもの」ではもちろんなく、これを相対化して見る目を学生に養ってもらうこと、これが教育者としての責務だと感じています。