真嶋潤子の最近の活動

  ←戻る
 
2018年8月31日
 ドイツのベルリンで8月29-31まで行なわれた日本学研究大会 (Japanologentag) の第3セッションで「日本の外国語教育へのCEFRのインパクト」と題した発表をしました。
要旨は以下の通りです。
「日本の外国語教育へのCEFRのインパクト」というテーマで、発表を行った。 発表は3部に分けて、(1)日本で受け入れられてきたCEFRの状況、(2)なぜ受け入れられるのか? CEFRの特徴について、(3)CEFRの最新補填版 CEFR-CV 2018 について、日本語教育を含む外国語教育の視点から述べた。 まず(1)では、2001年にCEFRが発表されてからの受け入れが非ヨーロッパの日本においてすら、非常に広範囲に、また国の教育政策にも言及され影響を与えるほどになってきていることを指摘した。NHK語学講座で英語講座の一覧表がCEFR準拠になったこと(2017年以降)、文科省の英語教育に関する提言報告書(2018)において英語の「外部試験」の利用を論じる中で「各資格・検定試験とCEFRとの対照表」を掲載し、説明していること、さらに国内の大学の外国語教育への活用事例として大阪大学外国語学部25専攻語の到達度目標をCEFR準拠で記載している事例を紹介した。また、研究対象としてCEFR関係の研究が科研データベース等の検索でも増加していることも示した。(2)CEFRが国や言語を超えて参照され活用されるようになってきた理由は、CEFRが「単なる言語能力の6段階のレベル表」なのではなく、その裏に歴史の反省からストラスブールに作られた欧州評議会が支える理念と哲学があり、CEFRには理念の裏打ちのある共通性、透明性、そして強制しない姿勢(参照されるべきもの)があるからだと述べ、国や教育機関を越えて利用できる「メタ言語・共通言語」「道具」であると述べた。CEFRは「人的交流の促進」「生涯学習」「民主的ヨーロッパ市民のアイデンティティ形成」「複言語主義」「少数言語の尊重」という理念を背景に持っているのである。(3)「CEFRは石に刻まれたものではない」という言い方で、可変的であり必要に応じて変えて行くべきだということを、発表者はCEFRの作成者の一人故J. Trimm氏から直接聞いた(2008ALTE大会で)のだが、B. North氏はじめ4名の専門家により追加改訂版CEFR-Companion Volume (2018)が今年2月に発表された。改訂された概念説明、レベルの能力記述の他に、特に「Mediation仲介」の部分が大きく加えられたことを紹介した。その他、行動中心のアプローチ(Action oriented Approach: AoA)の追加説明、オンラインの言語活動と、(自然言語としての)手話についての記述も加えられたことが時代の要請を反映していて興味深いところである。この新しい補填版CEFR-CVは、2001年版よりも読みやすく、教育現場で使われることを想定した書きぶりになっているので、今後外国語教育の分野にさらに浸透していき、インパクトを与えるものと予想される。
 
 この後オランダのフローニンゲンに飛んで、大阪大学欧州拠点を見学させてもらいました。所長の長谷先生にはお世話になりました。