FD研修会を終えて
真嶋潤子


 今年度のFD研修会は、本学での3年目の実施であり、過去2年とはスタイルを変えて行った。これまでの参加者から、「神戸セミナーハウスは遠すぎる」「本学でできないのか」といった「場所」に関する意見と、「宿泊する意味が本当にあるのか」「1日でできないか」という「時間」に関する声を聞いていた。それを受けて、新しい試みとして「本学で」「1日で」行うことにした。またこれまでの本学のスタッフによる研修完結型にせず、外部から講師を招聘した。

 計画段階で想定していた、今回の形にしたことで発生しうる「長所の欠落」と「短所の出現」を列挙してみる。
・環境を変えることによる「非日常性」が得られない(六甲山の自然の中)
 *それによってFD研修の中身への集中度が低下する可能性がある?
・セミナーハウスで食事(寝食)を共にすることで得られる参加者間の交流が得られない
・ 日常的な業務との境がなく、FD研修に集中しにくい
・ これまではほとんどなかった「遅刻」「早退」の出現

 さて実際これらはどうだったのだろうか。研修会当日の参加者のみなさんの様子やアンケート結果からわかることは、総じて上記の問題はさほど深刻ではないということであった。それよりも、今回顕在化したのはそのような外的要因ではなく、むしろ以下のような内容に関する問題点であった。
・ 全体講演と分科会の連続の具合すなわちその関係性
・ 研修会の目指すところが必ずしも全員に理解・共有されていない
・ 分科会の運営方法と時間配分
・ 学生生活指導者研修会との合同であったことの意味

 これらは確かに改善の余地があり、次年度には工夫が必要であるしそれが可能である。しかし、参加者の声として突出していたのは、「講師の先生がよかった」「講演が素晴らしかった」といった招待講演者(ICUの鈴木寛教授)のインパクトであった。特に何が良かったのか列挙してみる。
・ 講演内容が良かった
a)テーマにふさわしいこと
b)理論的かつ具体的でわかりやすいこと
c)ICUという本学と比較しやすい規模と内容の大学の話であること
d)ICUという極めて高い評価を受けている大学の内容であること
e)見やすく整理されたプレゼンテーションであること(プロジェクタの使用による資料の提示方法)
・ 講師がICUのFD主任という立場であり、参加者を納得させる専門性があること
・ 講師の専門が数学という、参加者だれからも「等しく遠い」ことによる「中立性」があること
・ 講師の人柄に対する好感度が高いこと

 以上の他に、鈴木寛先生と準備段階から何度もメールでのやり取りを行った中で、本学のFD研修会に本当に真剣に取り組んでいただいたことを感謝をもって明記しておきたい。そのような先生の姿勢がさらによくわかったのは、参加者から出された先生の講演に対する「質問紙」の扱いであった。講演の中で一部取り上げて答えられたというところまでは、「常識の範囲内」であっただろうが、全ての質問紙に対する返答を講演会の翌日にメールでお送りいただいたことである。これに驚かなかった人はいなかったと思う。ちなみに、本学ではこのような「アフターケアー」に対する謝礼は全くしていない。(何とかしなくてよいだろうか。)
 さて、我々がFD研修会の後半で分科会討議を行っていた時間帯に、鈴木寛先生にはご希望により本学の学生との懇談会とキャンパスツアーをしていただいた。後日談であるが、この時先生とお話した学生の中にはその後も先生とメールのやり取りをし、後日上京した際にICUを案内してもらうなどお世話になっている者もいるそうである。鈴木先生からは、本学の施設、教職員、学生いずれも「リソースフル」であると高く評価していただいている。もしそれが本当なら、きっとまだ生かしきれていないリソース(資源)が本学にはたくさん埋もれているに違いない。
 今年度の研修会が成功したとすれば、一重に講師の尽力による充実した講演内容のお蔭である。人選が良かったという点では、成功したことを誇らしく思っている。私自身の能力的、時間的制約などから、アンケート回収の不手際をはじめ運営上の不備があったことを反省しているが、言うまでもなくFD・学生指導担当者合同研修会・全学講演会を実施するにあたって、教育推進室、学生生活室のメンバーをはじめ、多くの方々の協力をいただいたことに感謝している。研修参加者の熱心な参加協力にも感謝している。次年度は4年計画の最終年である。よりよいFD研修会が実施できればと願っている。